こころのいちばんやはらかいところ

2

誰しも心の底のくぼみに
泪の水たまりを持っていて
その人肌が絶えないように
そっと抱きしめている

子どものころから少しずつ
いろんな理由で泪を流し
大人になると呑みこむから
どんどん増えてゆく

何も無かったかのように
時に、忘れて日々を過ごし
または思い出さないように
傍に誰かを置いて

街が夜の帳に覆われて
人混みのなかで不意に襲う
喧騒の波に追いやられて佇む
こみ上げるやるせなさ

本当はみな気付いている
だけど決して口にしない
それでも時を守ることが
生きる約束だから

あなたはあたたかいね
このまま少しの間でいいから
抱きしめてくれる?
そんなことを言ってしまいそうな夜だってある
そしてまた それを呑みこむ

── そして そっと泣く


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2009

こころは
人肌くらいがいいね
情熱を帯びた芯を守り
寒風すさぶなかで丈夫に笑えば
ちょうどそんな温もりになる

ことばは
尖ったり丸まったり
思いやりや気遣いは
手の平であたためて受け渡し
今日と明日は繋がっていく

境界線を
お祭り騒ぎのなかで
ひとり静かに跨ぐ人
生まれ変わりのない時空間で
連鎖の果てを呼吸するのも

そう悪くはないのかも

0

この世でたったひとつ
許しあえる手を捜して
不確かを拒絶しないで
まさぐりあっている
命で感じているから
カタチのないまま抱きしめようとする
未成熟な揺るぎなさが欠落するとき
傷つけあって互いの存在を確かめあう

めぐり合ったのは何故
眼を逸らせないのは何故
愛を知ろうとするのは何故

許しあうのは  何故?

2

Dream on death

いつか永眠る時に
一度だけ問い質される
最期にみる夢について

私はとまどい無く
「はい」と答えたい
待ちわびた事を隠さずに
色褪せず、そして汚れず
口に出せなかった永遠が
ためらい無く色彩を放つ

どうか迷子にならず
辿り着けますように

夢は──
  許されている

0

真っ白

本当に悲しいと
泪も流れないね
なにも囁かなくなったこころの
鼓動が消えていくのを待ってる
(手を貸さないが下さない)

残酷と背中合せ
空中ブランコは
空のまま宙をいったり来たりを
その虚しい振幅はやがて届かず
(揺れだけをひとごとのように目で追った)

催眠に掛かって
脚の震えは消え
受け入れるように墜落していく
ぼくの中の空洞を真っ逆さまで
(墜ちていくのも夢をみているよう)

本当に悲しいと
泪も流れないね
頭の中が真っ白という感覚を
過去にも体験した気がするけど
(もう一度あるってこと?)

目から火花が散る、もそうだけど
いっとう最初の表現者を
ぼくは尊敬する

2

時計

右手首の時計は私の時を刻む
見過ごした時間もサボらず刻む
西への帰路が間近な陽は肌寒く
バス待ちの老婆に時を尋ねられ
袖に隠れた遅い午後を呼び出す

時計は止まっていた

携帯を開き正しい時刻を伝える
安心した老婆は定期を握り締め
直に来るバスを心待ちにしてる
時計の時刻を合わせねじを巻き
動かない時を見つめ溜息を一つ

時計は止まったまま

老夫婦の営む時計店に足を運ぶ
その前がいつだったか三年前か
店は跡形もなく取り壊されていて
会話の無い効率のいい駐車場が
継ぐものが居なかったのだと嘆いた

時計は止まっていた

最後に交わした会話を思い出す
店主が電池を換えて掃除をする
奥さんが隣に立ち世間話をする
15年の歳月を喫茶店から眺め
なるべく前向きな想像をするけど

時計は止まったまま

私の「時」は止まったまま

0

青い糸

ところどころ絡まり「だま」になっていても
解きながら手繰り寄せ君の目の前に立ち
手の平に糸玉を乗せて微笑む
そんなことを夢見た日々

苛々が募って無理やり引っ張り千切れ
青い糸の端が風に虚しく揺れている

青い糸の端がどんどん遠ざかっていく
指先が「後悔」という字を曇り空に書く

切れた先が風の中でさようならと
動けないまま悲しみに蹲る糸玉

雲間が割れて陽が差すとき
私は見上げることができるだろうか
その意味を知るための旅が始まる
手元に残ったわたしの青い糸よ


──誰の、もの


1

風の音に

空を見上げては
鳥になってみたいと思っていた
制空権が欲しいわけじゃなくて
上からみる私はどんなだろうと

解き放てないのは
うな垂れている首でつっかえて
再び下りていく熱さで爛れる胸
弧を描き哀れむもなく無表情に

風の音に乗って
それが自由に見えるのだろうか
翼が艶を失う前に大樹を見つけ
満天の夜空の下で今日を眠る

風の道は無常で
月の満ち欠けと日天の傾きに
宇宙の一隅のバイオリズムと
生死に背くこともなく落下する

本当のことなんて
知らなくてもいいけれど憧れて
空が白むのを待って合図もなく
枝を蹴り飛び立つ寝鎮まる朝

もう一度見上げる首筋が伸びていたら
連れてってくれないか?
知ってる
自由じゃないことなんて遠のむかしに


0

Jigsaw puzzle

枯れることを期待されて待たれた時間

指はPieceをYesと言わない
無理にはめ込もうとしても反って
床に散らばるそれらしき欠片を
拾う振りしてポケットにしまったね
わたしは何も言えずに
だから

過去に怪我をした指先の傷
触ってももうあたらなくなったよ
ひとり言のようだけど誰でもいいから聞いて
そして「良かったね」とひとごとのように言って
それでも私は「うん」といって笑うから

自分のなかに片隅を置いて
窓から差し込む脆い日差しが
床をつたい壁を昇っていくのを
傍観のようだけど意識はしている
顔も上げずに夢中になって
そして

絵のない真っ白のパズルを仕上げなくちゃ

0

こっち側

俯くのにうってつけの日陰の道を
黙々と歩いておりました
屈託なく自然に洩れた
あなたの笑顔に出合ったような
束の間の日向に包まれた時だけ
生きていて良かったと思うのです

自転車の影があまりにも得意げで
踏まないように気遣いもしました

幸せの行方を知ってる人々たちは
向こう側をあたりまえに
それでも私は横断歩道を
そのためだけに渡ろうとはしない
こっち側を歩くのはいのちの癖かな
そんなひとり言を口にしてみました

ふわっと包まれたときの日向の暖かさを
忘れられなくて黙々と歩くわけなのです

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