こころのいちばんやはらかいところ

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有のなかの無であり
無のなかの有であれ

0

ジーンズ


洗いざらしのジーンズ
窮屈な刺激のスイッチ
アカルイミライは
いじらしいヒミツ

もどかしさで隙間を埋めませんように
ため息が空を懐かしがりませんように
合図を素直に受け入れられますように

あの頃みたいなセツナイ思い
それはそれできれいだけれど
拾うことに忙しく
私は抱えきれない


日向の匂いのジーンズ
くたびれた日々を洗い
アカルイミライは
風のなかの光と影


2

ゆりかご


ねぇ
誰が眠っているの?

幼ごころの記憶には
逆光を背負うシルエット
目蓋の裏に宿る祈り
こころの瘡蓋の剥がれ落ちる

頬を伝う泪は手のひらより熱いこと
指先は戸惑いながらも文字を書くこと
数秒の瞬きには同意があること
さっきといまの境界線に立ち会って
映る未来はわたしを通じて過去になる

ねぇ
何処にしまわれてるの?

わたしの前で潤んだ瞳
解いた感情の受け皿
決して他言はしない口
こころの琴線のしんと泣く

見破っていることを知っていること
泉には疑いの木の葉も浮かんでいること
必死に寄り添う嘘を剥がしたりしないこと
底に横たわる泥は眠らせたままがいい
仕方なく記憶をいきる これからも 

ねぇ
そこを越えたらいけない
わたしはもっと裸にする
きっと

わたしは許していく自分を寝かしつけ
はいもいいえも言わない安心になる
あなたは愛に囲まれたまま
手出しの出来ぬ独りになる

0

春の嵐


なにかが動く
それは
それが
春なのか

やがて忘れゆく大地に
根を下そうとする種子
そこに居ついても
だれも、
なにも、
わたしの、
世界の、
今日など、
ましてや明日など


大風は
その眼力で
頼りない土を吹き飛ばし
目を擦る木々を揺さぶり
軒下の暗がりを覗き込み
黙ったままの屋根を脅す
そして
法廷のような笑みの無い
迫り降りる空に向かって
詰問する


おまえは 
どこに 
いるのだ!


4

抱き合う


ふたりは裸で抱き合う
質問攻めにした口は
答える口を強引に封じる
欲望は忙しい
その間
それぞれ在らぬところにいる
だけど
とても冷静で居続けるところ
頭の芯がぞっとしている
ひとりでいたら寒いところ
はやく戻ってきたいから
たがいの瞳のなかを捜す

ああ、居た

おかえり
ただいま

ふたりは裸で抱き合う
こんどはじっとしている
生まれたときから知ってる温もり
欲望は用なし
もう
ひとりぼっちになりたくないから
そして
肌を撫でる音を聴いている
ひとりでいても温かいところ
それから静かにしている
たがいの心音に耳を傾け

どうか眠ってしまうまえ
腕のなかをぎゅうっと強く
そして解いて

ああ、居る

ただいま
おかえり

2

モザイク


ここに空が欲しい
すると
こころの欠片たちが一斉に名乗りをあげる
空は多くの人々に期待され、在りつづける
なので
ときどき見向きもされなくなる

わたしは欠片を磨き
または時代の垢に覆われたまま
光と影を置いていく

夢見るチュニジアンブルー
憧れの近くにも及ばない 
で、
未完成がのた打ち回る
それゆえ
わたしはわたしの承諾を得
生きている


0

重たい海


重たい海に浮かんでいる
いつもひとりじゃない
意識を失わない程度の沈黙がいいけれど
最近のわたしの周りったら騒がしい

流木にでもなった気分で
それは誰かがしがみついているから
血を分け与えた者だったり
分かち合おうとする者だったり

成るようになる、と言ったひとは
成ったことに文句をいい
成るようにする、と言ったひとは
成るためにわたしを食う


黙りこくりたい
動きたくない
見えなくなりたい
溶けてしまいたい
不必要になりたい
だけど死にたくない

わたしを浮かべる海は重たく
沈めたい夕陽があるのに


3

黄昏


秋空
ふと
懐かしさにこころ襲われ

あたしは
追いかけていた
なにを
追いかけていたんだっけ
あたしは
探していた
なにを
探していたんだっけ

忘れた

あたしは
逃げていた
なにから
逃げていたんだっけ
あたしは
奪っていた
なにから
奪っていたんだっけ

忘れた

冬空
ふと
忙しさにこころ盗まれ

2

オヤスミナサイの祈り


どこか旅にでたいな
なにかするため
なにもしないため
誰かにあうため
誰にもあわないため
ひとりになるため
ひとりにならないため
おしゃべりになるため
なにもしゃべらないため
自由になるため
不自由になるため
花をさがすため
枯れ枝を集めるため
夢をみるため
深い深い眠りのため

(ToDoの半分もできなかった)

このうえない疲れに
今日の残りをくれてやるため

(それで許してほしい)

2

見つめるひと


わたしは言葉を信じてはいない
無意識の動作に潜むただならぬ呼吸
そのひとの後ろにそっと立ち
ただ見つめている
わたしは見つめるひとになる
なにもしない
あなたがそうであるように
わたしは見つめるひとになる

わたしは
あなたの後ろにそっと立ち
あなたの無意識を見つめるひとである

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