こころのいちばんやはらかいところ

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キヲク


わたしに似てると言えば
質の悪い画用紙だった
いまよりずっとザラついていた
色の埋まらなかった凹は
離して見ると光を醸しだしていた
言葉を持たない夢があった
笑みがこぼれるような一瞬がそこにあった

正直なクレヨンは
誰もが同じものを所有して
減り方にはいろんな解釈があった
並び方はまちまちだけれど
棒グラフのような規則性があった
間違わないような癖があった
使われない色は暗黙の了解で決められていた

ひっかき絵のために
息を殺す色があった




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父の背後で


父は俯くひとでは無かったが
前傾がかった後ろ姿に
小さくなった、と。

決して遠くはなくなった眼差しを
まるで
うたた寝の肩に
カーディガンを掛けるように投げた
せっかちで追いつけなかった足取りも
今では迷子になるようで
寂しさと切なさで呼び止めた

皺だらけの瞼に殆どを覆われた奥で
まだ キラリと光るものがある
まだ 懼れるものがある
一寸たりとも乗り越えたりしない
あなたの子供でいられることに安堵する

父は 
小さくなってしまってはいるが

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落日


陽が落ちたあと 
直ぐ

町は やわらかいものに包まれる
シャツを脱ぐ時の
ほわ と逃げる体温のような色だ

なんて
かなしく
なんて
やさしい

なんか
せつなく
なんか
あったかい

陽が落ちたあと
直ぐ

直ぐだ


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日曜日の朝


風のない朝
ふわり、と 浮ぶのは
朝日を浴びた か弱い虫
綿毛のように 宙を舞う
きらきらと きれいだね 
穏やかな朝

風を待つツバメ
杜で相談 するカラス
居眠りのネコ
耳だけを三角に起こして

影は揺れた 
ひらり、と 視界の隅
ひと息つく 白いシャツ
風のささやきに 微笑んだ
そよそよと 気ままだね   
影も揺れた

頼もしいヒカリ
腕にヒリッと 痛み覚えた
髪を結わって
植木に水をあげましょか

ほら    
・・
いつものあれを口ずさみ
植木に水をあげましょう


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髪を切らなかったんだ


乱反射したゴガツの光
真珠のような光沢を纏う雲
それは
風に歩調をあわせて ゆっくり行進する
ワタシは雲の浮かぶ空が好きだと思った

そして
クスクス笑う 歩道に落ちた葉陰
風の通り道にたたずんで首を傾げる

それと
ずっと伸ばしていた長い髪が
風が頬を撫でるたびに道の上で遊ぶ

そうだ

なんで 髪を切らなかったのだろう

こうして 風がそよぐときに
なあに? と、振り向く影が好きだった
そうして ジブンの声を聴く 


そうだ

髪を切らなかったんだ


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ラ・ラ・ラ


歌詞のないうたを きみにあげるよ

期待した朝に雨の音がしたら
やり直しをするみたいに
もう一度 目を瞑って戻ってみたりするけど
やっぱりそれは嘘じゃなくて
ため息の枕に埋もれて
秒針を無駄に数えて怠ける理由を探った

そんな朝でもFMは
わたしの憂鬱を掃うように
「歌詞のないうたを きみにあげるよ」
 ラララ ララ

深層心理のネガがユメだとして
なんでもアリな世界でも
もう二度と 同じことはしないだろうけど
すっかり疲れ果てた朝に
歯磨きは規則正しく
答えは眠ってるときに導くもんじゃないから

どんな朝でも太陽は
わたしの深刻を笑うように
「歌詞のないうたを きみにあげるよ」
 ラララ ララ

でたらめな鼻歌のように
忘れそうかもしれないけど 
歌詞のないうたを きみにあげるよ

スニーカーの紐を縛りなおす 
屈んだきみの背中に
歌詞のないうたを きみにあげるよ


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思いつきみたいなもの


いまなら上手くやり過ごせる
我慢するほどのことでもないし
ちょっとがっかりするのも
ひとつのため息で終わってしまうよ

なぁーんだ




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朝凪、夕凪

朝と夕
気がつけば凪だけを見つめていたのだ

ペンキの剥げた木枠の窓をカタカタ揺らし
なかなか癒えぬ傷口に風は沁みた
カーテンは振り向く前に居ずまいを正し


この季節の風には
いつも苦笑いをしていた
そんなことすら忘れていた朝だったのだ

(彼のいうとおり 海が静かなのはよくない)

不意をつかれて
苦笑いをするしか無かった
こころの浅瀬に漣のたゆとう夕方だった


フッ、と思い出に口緩む日を願いて
硝子が泣かぬように窓を閉めた
カーテンは気遣うように沈黙していた

朝と夕
気がつけば凪だけを見つめているのだ

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シンセツなヒト


彼はとても親切な人だ
──過ぎるほど


わたしは
根の張らない会話で
ぼんやりと遠くを見てる
ひとりになりたいときも
どこからか継ぎ接ぎの会話を拾ってくる
ざらっとしたこころを手で抑え
気遣いに笑顔で返したものの
苦手なレバーを噛まないで
飲み込んだときの感覚に似てる


彼はみんなのなかで
とても親切で通ってる
分け隔てなく

偉いな、と思う

だから
逸れたときは
そっとしておいて欲しいのだが

彼はとても親切な人だ
──過ぎるのだ


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ばかやろう


早朝からガソリンスタンドに列が出来る
仕事を終えたあとも
その列は延々と道路の端を塞いでいた

スーパーの棚も
コンビニの棚も
何が置いてあったのか分からない
驚いてるうちに
わたしは何を買うのか
忘れてしまった

わたしはゆっくり歩きたい
つつましい今日の暮らしが
人の荒波にのまれてく
鈍感な手が津波となって
棚から根こそぎさらってく

ばかやろう

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