こころのいちばんやはらかいところ

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日なたを歩く


舗装したての柔かいアスファルト
冬の日なたでぬくぬくしてる
心なしか靴底も喜んでる
そうだ今日は忘れない日になる

ただ歩いているのと違うんだ
この道はやがて無表情な色に変るだろう
そんなことでも切なさ感じる
笑っちゃうでしょ?

そんなの知るか!と言われたって
こみ上げる眩しさに浸ってる
向こうから歩いてくる人
悪いけど今日は道を譲らないよ

ただ歩いているのと違うんだ
足跡が日陰に盗まれないように歩いてる
そんなことでも用心している
笑っちゃうでしょ?


悪いけど今日は道を譲らないよ
日なたを歩いているんだ いま
あんたがどきなさい


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うたはいつもそこにあった


わたしが風のこどもだったとき
うたはいつもそこにあった
制止の指を立てられることなく
ハミングのような軽やかさで

初めて孤独について考えたのは
見守る眼差しが盲目なのだと知った時
わたしは言いつけを守らなかったし
じぶんのなかの善悪は
指を吸うまえ記憶の海で学習した
柔らかい芽は深刻な傷さえ
遺伝子のように受け入れ
廻りのなかで事実だけが残った

うたはいつもそこにあった

悲しいときは声をあげて泣き
愛というものを確かめようとした
わたしは疑うことを知らなかったし
だけど怒りにそれはなく
彼らはそこに根付く自分自身を憎んだ
わたしは彼らから剥がれていく
そして彼らが訂正したとき
慌てて走ってくる愛に縋った

うたはいつもそこにあったさ

楽しいときも嬉しいときもうたった
だけどそんなときは
笑った誰かに全部あげてしまうので
見る見るうちに手ぶらになった

笑いながらバイバイしたのに
淋しそうに何度も振り向いた

うたはいつもそこにあったんだけど

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夜明け前


君よ
まだ 夢のなかの君よ
月は
この夜いちばんに静寂し
朝待つ者たちを暫らく無口にす
風は
真空のはざ間で産声を上げ
昨日は記憶に生まれ変わる

君よ
まだ 夢のなかの君よ
星は
無名の浪漫とともに在り
彼らの刹那は地上の永劫と為る
愛は
揺るぎなさを追い求め
善悪の手から零れ落ちて往く


まだ 夢のなかの君よ
私は
目覚めのうたを幾つか知る
だけどそれらを歌いはしない
君よ
朝が美しいのは瞬きする間
今日を手垢だらけにしようとするまでの

君よ
私は

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Me*(Asterisk)


         
い ま        
今から逃れるような現在
臨場感の無い興奮が続いた
視線に悪意は無いが狡さはあった
わたしはお人好しになった
そして少しばかりの同情に浸り
もっとも自分を遠ざけたのだ


たとえば
それを心無いと云い
たとえば
それをふしだらと呼び
たとえば
それをこれ見よがしに罵る

それは
古い血
それは
無神経
それは
陰気な塵

それは
濁った川
それは
ねっとりした風
それは
人騒がせな大地

それは
それは
それは

拾われない骨
顕になった名無し



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終わりのそこいらへん


始まりには始まりがあるけれど
終わりには終わりがない
あなたの終わりとわたしの終わりは
ずるいすき間をすこし開け
その後の長い時間を気づかぬくらいくすね
言わなかったことを終わらせないでいる
後悔なら始まりで終わらせていた
そこには誰も立たせなくて
だけどあなたじゃなく
  嘘がいる
それは本当の嘘だから
わたしは吐きとおす
終わりのかわりに



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晩秋の浜辺


水平線の波の正体
鳥は魚群を追っている
私には遥かなる安心感がある
鳥達は遠さの記号になった
啄ばまれた波が
何時、たどり着くのか
数え待つことが出来ない
反射と拡散をくり返す光は
風景という時差に惜しげもなく与え続け
ずっと其処に在るもの
身勝手な願いにも似た

私は少し左に傾いた
それはチロチロと
生きもののように群れて曳く

わりと近く
すぐそこ
でももう見ることは出来ない
訊き返さなかった言葉みたいに


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何も所有しない


私は何一つ所有していない
この世界を生きている奇跡と
汚そうとしても汚れない忌々しい手と
いまにも崩れそうな白い塔を瞬きし
早死にした2pacを聴いては無性に悲しくなり
他に入るものがないのでエンドレスで廻しつづけ
私はとうとう ひたひたになってしまった
部屋を暗がりにしたまま今日を終わろうとする
そしてそれすら所有していないことも知る
たった今

いまも私は老いていく
近づきゆくことを拒みもせずに
夜の静寂を暴きたてながら
期待と拒絶の旗が音もなく翻る

何も所有しない 夜に

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まだ見ぬ十年先のため息


昨夜だって月は冴えていた
直感と回りくどさが夜を奔る
思いやりと思われるものは
体温を奪う風だということ
石畳をコツ、コツ、コツと
私を追ってくるのは冷静さ

まだ見ぬ十年先のため息

もう直ぐ終わる小道に猫がいる
啼きもせず内なる私を凝視する
全身全霊で


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屋根


おまえがしゃべらないから
静かな夜

おまえが描こうとしているのはお喋りな夢
でも今は沈黙を点描する
夜だというのに眠らない一角
暗がりの毛布にうつ伏せていた
篭る声には消えそうな未来の話
透きとおる水彩絵の具

答えはもう出ているかも

ポツンポツン ペンを撞く

ぽつりぽつり雨が屋根を叩く
屋根は私たちの知らないことを知ってる
知らなくていいことも全部
厚かましい日照り
かつて私が愛した雨
カラスのタタタという皺だらけの卑しい足音から
風の誰かを連れ去ったときのもの悲しい泣き声
人知れず根付いた苔が世代交代をする息吹
ああ、今までの溜め息も少し居る

ねぇ、聴こえた?
屋根。

おまえは屋根を見下ろす夜を見上げる

なんでもないよ
静かだね

おや? 雨が降ってきたね

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シャツ


私は風の中の詩を探した
意味のない風だった
遠慮などせずに洗濯物を干した
シャツやタオルが意味、ありげに揺れた
気のせいだった

穏やかな秋陽は遠く低く
町をそっと反映する
偽だと分かってる優しさを瞬く
バイクや車の濁音が無礼、のように往来する
苛立ちのせいだった

時には意味もなく
勘ぐらずに済ませ

(はぐらかさないで)

日々を生きることが私の努め
その中に潜む
不安、迷い、葛藤、絶望
その中に生きる
鼓舞、自立、道標、希望
無意識でも生きる姿勢に汗を滲ませ
首筋は隠れたところでいつも見てた

天空の風
唯、
吹く


沁み込んでいた陰気な感情を飛ばす
どこか遠く
ずっと高く

遅い午後

ひらひらと
のん気に踊る シャツを見上げて

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