こころのいちばんやはらかいところ

4

墓を発く

自分の根っこに辿り着いたときに自分の墓標を見つけた
それはずっと後のためのものだったけど
生きながら人間は「生死」を背負っているからとパパは言った
元気で伸び伸び育てといいながら
パパはずっと宿題を出し続けた
あたしは苦しくて自分の墓を発いた

身体は自由に解き放って精神はずっと鎖を引きずっていた
子どもらしくない子どもだったと自分を疎む
頭でっかちの生意気なガキはもがきながらも世間を学ぶ
友達と違わないように必死だった
余計なことは言わないように
いつの間にかおとなしい大人になった

今頃になってあたしの背骨はギシギシと軋んでいる
パパがね「あと5年は生きていたいかな」と云った
ママが死んだことで「親は死なない」なんて無理な祈りはやめた
その時に過去の宿題の答えの封筒を開けた
中身はもちろん知っていた
「緘」の開封に意味を持つ

決して口外せず世間を生きて、己を生きていこう
間違いじゃない、勘違いでもない、云わば「持ち場」
他に誰かいたら指を立てて制止を促し
眼だけで話すことも可能だから 頷くだけで分かるから
いや、魂を読めば瞬時
墓の中の生死を眺めながら生きて行く

どうしようも無い違和感を埋めずに生きていこうとする
誰にも土は盛らせない覚悟は出来ている
口にしようものなら病気だと言われそうでずっと独りで抱えてた
その手のひらに隠れた文字が君を呼ぶのなら
ただ、見届けて 見守って
君もきっと、 自分の墓を発いたひとり

  

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2

7月になったら

六月にはいろんな雨が降ったわ
一年に匹敵するくらい長かったよ
いつも招くのは
あたしなんだけど
それももうすぐ終わるよ

梅雨の合間の晴れ日にはきみが
にこにこ笑って外に出ようと誘い出す
しとしと降る日には
自分が食べたい
ケーキ持参でやってくる

南の島では梅雨が終わったって
昨日のニュースで言っていたよね
あたしより早く
きみは青い空を仰ぎ
翌日には雨の滴の窓を叩く

夏のきみと冬のあたしの真ん中は
春でもなく秋でもなく何時でも何処でも
7月になったら
雲のあいだの青い空に
君に宛てた紙飛行機を飛ばすよ

7月になったら
雲のあいだの青い空に
君に宛てた紙飛行機を飛ばすね

1

One's

直感──
じゃないのよ

この世に存在する
あたし、きみ、あなた、ぼく
引き合う魂が重なってゆく
一族だけが喚ぶ符合

生まれたときには
かこ、げんざい、みらい
握り締めたてのひらに
刻印されていたのにね

みっつを過ぎるころに
消えるように組み込まれ
さも運命に委ねるように
見知らぬ人となり散ってゆく

肉体の束縛は地上の掟
精神の自由は無常の掟
こころは人肌を保ち
無意識に探して、いる

不確かなセカイは
今も昔も変わらず存続し
発達途上の時代の中で
そういうものだと気付かず

近似値ではめ込むと
もう絵柄は変わってしまう
コミュニケーションのパズル
疑わなければ完成してしまう

輪廻を繰り返し
未来の運命を捜す
今世の虚無感を感じながら
過去の違和感を達成しながら

この世に存在する
あたし、きみ、あなた、ぼく
引き合う魂が重なってゆく
一族だけが分かる符合

だから
直感、じゃないの

  

0

レインノイズ

北に面した私の部屋
雨の日でも窓をあけて
昨日という過去を逃がす
視界を過ぎる真っ直ぐな雨
すき間無く降り続いて
身体に残る眠りの残骸
今日を食われないように
肌寒さをかかえてさらす
ねぇ、あたしを起こして

灰色に滲む街の通り
お気に入りの紅い傘
路地を一本分け入って
無口になった公園の
ブランコ揺らす幼い影
モノクロゥムの映像に
今を奪われないように
音を立てないようにね
ねぇ、あたしを明かして

傘はもっているのよ
翳してくれる親切に
頭を下げて苦笑する
そうね 濡れるわよね
世間話より雨の音が
気になって仕方がないの
今日を流されないように
耳をそばだて聴きたいの
ねぇ、あたしを行かせて

一日中、降り続いた日
強く弱く、それでもずっと
無意識を繰り返すのを
咎めるノイズは夜に止む
髪を乾かしながらの窓辺
水たまりを打つ高音の雫
今日がそっと満ちてゆく
一滴を数えながら横になる
ねぇ、あたしを眠らせて

6

名前を呼んで

簡単な名前だけど
そのようには生きてないわね
おとうさん、そのようには
育ててもらってないわね
なにを託したかったのかしら

平凡な名前だけど
誰にも呼ばれてないわね
おとうさん、あなただけよ
もうすぐ私が誰かって
忘れられてしまうのかしらね

好きじゃない名前だけど
それしかないのですものね
おとうさん、その意味は
これから開花するかしら
我が儘とそれは違うのよね

主人が名前を言ったのは
あたしを下さいと頭下げた日
おとうさん、それ以来
聞いたことないのよ
その日を限りに居なくなったわ

何て名前だったか
自分でも忘れそうになるのよ
おとうさん、普通すぎたわ
この先誰かが私のこと
名前で呼ぶことはあるのかしら

ねぇ、私の名前を呼んで

  

0

Fight Me!

私の足元で立ち上がる風を
自在に扱えるように
まだおぼつかない意思で心弱いけれど
前向く気持ちに乗せて
靴に羽根が生えたように
今日を駆け抜けられるように

心もとないこころのすき間を
自由に描けるように
まだそっとしておきたいものもあるけれど
今日、踏み出した一歩に
お気に入りのスニーカーが
新しい発見をしてくれるように

へこたれたって顔をあげて
自分に正直であるように
まだ見えないことへの不安もあるけれど
根っからの興味が擡げて
出会えるモノを好きになれる
そんな嬉しい今日であるように
  

0

Saudade

剥きだした赤土の彼方の陽炎も消え
轍のあいだを生き延びる雑草が
西からやってくる夕方の風になびく

時の彼方への想いは詩集を読むように
海風が心地よいデッキで過ごし
ソーダ水のグラスの中で陽が沈む

ひんやりとした感触を確かめるように
芝生の刺激に素足を委ねる
水平線をたゆとう朱がのまれるまで

波の寄せ返しだけが鼓膜を刺激する
気の抜けたソーダを飲み干し
遠い昔に交わした言葉をふと思い出す

宵闇に息を吹き返す小さく揺らめく炎
風にあおられチリチリと鳴る
戻るように促す紫煙 つま先は部屋に向く

深い夜はこれから
長い夜はこれから
目覚めはこれから

思い出になるまでには未だ鮮やかな色
残夏の頃には陽に焼けて
褪せていく「時」に触れて指先が少し泣く

褪せていく「時」に触れて指先が少し泣く

  

0

午睡

首筋にかいた汗を手で拭いながら
解れた髪を撫で 高めに縛り直す
目覚めたときに寂しくないように、の
付けっぱなしだったラヂオのDJも
丁度あくびを噛み殺していたところ
ゆるい午後に流れた曲はラブソング
振り向きもせずキッチンに向かう

拘っていた紅茶をコーヒーに替え
大きめのマグカップに注ぎ淹れる
砂糖は入れず ミルクも要らない
思わず首をすくめる苦い目覚めを
カフェカーテンから町の様子を窺い
通りがかりの老人のお茶目なウィンクに
カップを掲げ To Your Health!

傾いた陽差しは影を少しずつ伸ばし
今日という日を追い立てはじめる
昼前にやっと干した白いシャツが
心地よい風に揺れ 軽く東になびく
せっかく乾いたところを呼びだして
ぐうたらにも洗い晒しに袖を通す
ちょっと町まで買い物に付きあって?

背を押す低い太陽に影は薄らいで
ゆっくり過ぎる夏時間の午後を踏む
いまは気遣う誰も待っていないから
そう、駆け抜けた日々はずっと後ろ
シャツの袖をひじまで捲くりあげて
少しだけ 丁寧に生きてみようと
昼寝の言い訳を考えたりしてみる

シャツの袖をひじまで捲くりあげて
遅めの午後をゆっくりあるく 

そうだね──
  少しだけ 丁寧に生きてみよう、と

  

0

そうだった

直線の雨が降る
どこに流れてゆくのか
黒くなったアスファルトを打ちつづける

なだらかな坂の途中で足を止め
傘の柄をギュッと握りなおした
白い「止まれ」が妙に強く浮き上がって
ため息をついた
あたしは出来なかったのね、と

違う──

止まりたくなかったのよ、

4

もう少ししたら

似ているような景色に触れて
すこし前を思い出す
発色をおさえて自分を守る
胸の下あたりに走る赤いものが
込み上げないように みぞおちを抑える

なにも動かさないように
こころを握り潰して
自分は歩きもせず電車に乗る
時間が経てば今日から明日くらいは
進んでいるから すこしこうして

弱いね あたしって
だけど もう少ししたらちゃんと歩くから
車窓から見える景色が 巻き戻る
でも 見ないようにぼんやり過ごす
弱いね あたしって
だけど もう少ししたらちゃんと歩くよ

  

3

ぼく。

ぼくは正面からみたら
病んでるのかもしれない
正しい人がいうから
間違いないのだと思う
ぼくは横からみたときだけ
普通にしているらしい
世間と上手く折り合い
生きづらさから逃げてる

ぼくは後ろからみたら
孤独なのかもしれない
独りぼっちが言うから
それは本当だと思う
ぼくは斜めからみたら
少しだけ優しいみたい
ぼくのポケットのなか
涙くらいの温もりはある

ぼくは上から見たら
傲慢なのかもしれない
えらい人がいうから
当たってるんだと思う
ぼくは下からみたら
小さいのかもしれない
小さいひとがいうから
きっともっと小さいんだ

ぼくは内側からみたら
何もないのかもしれない
僕を僕と思っているだけ
君には僕が見えてる?

4

月曜バス

バスの窓は少し結露して
暈しが効いてけじめのない景色
お決まりのように
ニコちゃんマーク?相合傘?
そこからすべて崩れてゆく

しゃにむに手の腹でかき消して
滲んだオフィス街は月曜の行進
うつむきながら
傘を差すもの畳んで勇むもの
誰も何も変わらない日々

昨日、私に起こったこと
神様だって忙しすぎて聞いちゃいない
信じてないけど
ずいぶんと不平等なんだなと
セカイのバランスに苦笑う

日曜日が嫌いなのは
昨日今日にはじまった事じゃないけれど
反抗を試みる気配
もっとパワーを求められる私
背中の意思が頑固になってゆく

曖昧がすきなのは嘘
それに胡坐をかいて笑って過ごす
先延ばしが圧し掛かる
朝からため息をつく乗客が
また各々の窓を曇らしてゆく

目的地はまだ先
急に降りたくなった
戦闘の助走が必要みたいだ

2

縁側

木の縁側ってさ、
この時期は座るのをためらうよね

久しぶり、
そんな躊躇をしながら
スカートを押さえながら君は座った
きっと湿っぽかったんだろう
もう一度座りなおした

君ってさ、
変なところ意地っ張りだから
座布団出しても「いい」っていうよね
座布団が湿るのを気遣って
分かっているから出さないよ

だからね、
あたしもそのまま横に座った
座るのにも「よいしょ」なんて言っちゃって
ほんと、もういい歳だね
それを言うなら「良い年でしょ?」

あはは、
やっぱつめたいじゃん、この意地っ張り
「でもこの縁側が好きだなぁ」って
やっぱり座布団持ってくるよ
君は立って桔梗の花壇に歩いてく

はいよ、
「今さら遅い」って君は笑う
「知ってるよ」って私も笑う
六月の梅雨の合間の片隅で
今日が君の好きな空で良かったよ

ほらね、
君は膝の上に座布団乗せて
やっぱり意地っ張りなんだなぁ
お茶を淹れるねこっちで飲もう
庭を振り返りながらあがって来る

木の縁側ってさ、
この時期は座るのをためらうよね

桔梗、少し持っていく?

0

水墨の道

今は原色の街もなんだか滲んで
うっかりするとあたしの水墨の道に
誰かが迷い込んできそうだから
生活音が眠る朝に結界を張る
出来れば雨は昨夜から降り止まず
低気圧で身体が重く
枕に耳を押し付けて
窓の外の音にため息をついて
愚図るような朝

あたしは誰も居ない坂の途中
犬の散歩も「休み組」もいてまばら
多分、雨コース 挨拶もそこそこ
ねずみ色の雲が近くまで降りて
黒いアスファルトに点滅する信号
とくに急ぐこともなく
雨の音が一粒単位
坂の上から見渡す町はまだ眠る
水墨のような絵

愚図るような朝に結界を張る
誰かが迷い込まないように
あたしの水墨の道に結界を張る

0

ちょっとづつ

ちょっとづつ駄目になっていく
失くした自分を思い出せない
心がむき出しに晒されて痛い
何でもいいから包むものを
何でもいいから隠すものを

ちょっとづつ駄目になっていく
溜息をほうっているアタシがいる
手が届くところに「眠り」を置く
ねじ伏せないと眠らない
夜が死ぬまで続きそうだ

ちょっとづつ駄目になっていく
脱ぎきれないもどかしさの嫌悪
欲はなくミネラルウォーターと煙草だけ
見てみぬ振りのアタシがいる
生かす程度に呼吸をしている

ちょっとづつ駄目になっていく
ちょっとづつ
ちょっとづつ

0

立ち止まった僕

普通といわれる自分の中の普通の顔で
今日も何となく生きている
なるべく嫌われないように
なるべく好かれないように
そうやって僕はボクを殺している

習慣でつけるテレビのニュースを聞き
通りすがりの傍観者になる
なるべく怒らないように
なるべく悲しまないように
そうやって僕はボクを生かしてる

仕事は生活の背骨だと言われるままに
今日も時間の下僕になる
なるべく埋もれないように
なるべく目立たないように
そうやって僕はボクを殺している

家族は僕の源だと 思い言い聞かせて
口に出せない絆を頼りに
なるべく不安を抱ないように
なるべく不満を抱ないように
そうやって僕はボクを生かしてる

生きていることをあたりまえに思って
今日もなんとなく生きている
なるべく疑問をもたないように
なるべく納得しないように
そうやって僕はボクを殺しボクを生かす
そうやって僕は──

0

あずかり知らぬ生活

          ひび
突き立てた杖の罅が国境をつくり
大地をを分断したら納得するのかい?
為政者の演説は終わるのかい?

世界の果ての
小さな農園で自給自足で暮す者
彼には天気の心配だけで
風の向きは雲の行方
雨が降る前に鍬をひとつ入れるだけだ

地平線の真ん中の
バオバブの樹の下で汗を拭う者
彼には昼夜の心配だけで
日没のまえに寝所を探す
闇に生きる獣たちに身を差し出さないために

七つの海を制する
無感情の波濤を越えて旅する者
彼は神の機嫌を伺うだけで
羅針盤を胸に祈りを捧げる
自分の愛するモノを海の藻屑にしないために

無関心になった街
終戦直後から街の風を見ていた者
彼が持って往く思い出だけで
この国の旭日も斜陽も
あずかり知らぬと恍惚に浸るだけだ
          ひび
突き立てた杖の罅が国境をつくり
大地をを分断したら納得するのかい?
為政者の演説は終わるのかい?

2

それは 長いため息をついたあと
音もたてずに地を走る根が消える
思い描くこともなく美しい色彩を放つとき
削がれる痛みすら愛おしくて抱きしめる
水面に映る月が一滴の泪で 揺らぐ
永遠にも感じる一瞬 風が、止む

それは 昔に聴いた音を拾ったあと
うつむいた瞳が真っ直ぐ前を向く
過去に放った鳩が戻ってくるのを知るとき
ポケットが住みかになった手を見つめる
路上の詩人の子もり唄が 泣く
永遠にも感じる一瞬 風が、止む

それは 同じこころで頷いたあと
反りあうものが同じ温度で重なる
皮肉にも一つになったのは別れをうなずくとき
心の奥底にその想いが沈んでゆく
抱きしめていた虚しさに体温が 戻る
永遠にも感じる一瞬 風が、止む

遍く大地に解き放って 行方も追わず
すべてが手元に戻ってきて それを慈しむ
ひとつ と ひとつ 永遠にも感じる、今

回帰した丘の上の 風が、止む 

0

灰色ノスタルジック

国道がまだ剥きだしの土のころ
タイヤが踏むところは窪んでしまって
雨が降るとぬかるみになった
停留所に留まるときにグッと傾き
泥水を撥ねる 
子どもたちは「わぁ」と言って傘を翳す

雨に不機嫌な大人たちは我先にと
子どもは騙されてどんどん後回しになる
不思議な声色の車掌さんは
腰の鞄から切符を売り鋏を入れる
それがかっこいい
混んでいるとそれも省かれて少し傷つく

満員バスの大人の口は乱暴で
あたまの上は蒸した文句ばかり
ドアはひとつで乗り降りするから
巻き込まれて降りられなくなる
降りますよ!
親切なおばさんが子どものために怒鳴る

揉まれながらバスから飛び降りる
着地地点の水たまりを騒がせながら
振り向いてお辞儀をする
おばさんはもう他所を向いて
ちょっとほっとした
おしくらまんじゅうに気をとられて傘をなくした

バスの背中は左右に揺れながら
雨脚に愚痴をこぼしながら走ってゆく
小学校までは友達の傘で
失うことの虚しさと怒られる帰宅を憂う
そんな一日
夕方の停留所に座ったまま雨は止まず

トタン屋根から落ちる水の音、ずっと止まず

2

六月の庭

柔らかい晴れの朝の光を
控えめに纏うレースのカーテン
昨日の雨で洗われた緑の葉先に
ちいさな笑顔がほころんでいる
風にゆれ
それはクスクスと笑う
いたずらな少女たちのよう

小手毬のような紫陽花は青紫
一雨ごとに深みをおびて凛と咲く
憂鬱な傘の言い訳を受け取るように
路肩に投げられる視線をねぎらう
雨にうたれ
それは足元を濡らす
働くひとを励ましているかのよう

虫を追う低空飛行のツバメ
ねずみ色の雲が私の庭を
明日は雨だと耳打ちするように覆う
だいじょうぶ洗濯はいまのうち
揺れる影
ぴん、と猫がヒゲを張って
水蒸気を帯びた風の道の便りを読む

六月の庭に陽が注ぐ
六月の庭に雨が降る
六月の庭に風が吹く

六月の庭に、便りが届く

0

六十八億ぶんのひとつ

あたしは
どの辺からいるんだろう
幾つもの生死のなかで
あたりまえのように生きてきた
ときに──
生きていることに疲れ
悲しみに暮れて
粗末な思考を張り巡らし
真っ青な空の下
誰かの鼓動が
消えかかっていることにも気付かず
誰かの祈りの組み手にも無関心で

あたしは
どの辺にいるんだろう
幾つもの出会いのなかで
きみを知ることなく生きてきた
なんで──
今だったのだろうと
戸惑い、揺れて
きみのつま先に根を走らせ
こころの真ん中に
きみの鼓動が
聞こえるくらいに想いをよせて
後ろを振り向きもせず沈黙の背中

あたしは
どの辺まで来ているんだろう
幾つもの苦楽のなかで
やっと学びながら生きている
誰でも──
いつかは死ぬことを
遅まきながら理解が出来て
天秤が傾いたころ
自分のこころに
耳を傾け 声を聴き うなずく
残された時間を正直に生きられるのか

六十八億のひとつ
あたしが今日死んでも
一秒ごとに入れ替わるカウントのなかで
だれも気にもしない
だけど
あたしの鼓動が止まない
あたしの情熱が褪めない
だけど
だれも気にしない
だけど──
私があたしを忘れない


-

シークレットガーデン

誰も知らない荒れ果てたこの庭に
ポケットの中にひとつだけ残っていた種を
種をひとつ埋めました
季節はずれの上に堅い殻
あたしが生きている間に
芽吹かないかもしれません
千年経っても
花は咲かないかもしれません
そのまま朽ちて土になっても
「後悔」の墓標を立てるくらいなら
そうしようと思いました

いつか日溜りのなかで
微笑っていられるように
素直だったあたしを──
褒めてあげられるように



0

タブレット

方向性が無いと言い訳をしながら
縦横無心に言葉を浪費して
だれのものでもなく
だれも受け入れるでもなく
自分の居場所を確かめるだけの

硝子の箱に閉じ込めた昔
かつての箱が見当たらない
禁断の箱が消えている
黄色のKeep Outで
ぐるぐるに巻かれたルールの箱

すべての時間が前に倒れて
薬の抜けない体は
重力に逆らって後ろに倒れた
指先の鉛の残骸が錘のよう
脳味噌も金属みたいに重い

似非病人は進んで紐解く
空っぽに満たされる症状
行き所の無いこころに
タブレットを放り込み
あ…、とデジャヴに気づく

結局、四方八方に散ったあたし
呼び戻す符号を考えていなかった
抜け殻と化した固体に
堆積してゆく手放しの効能
ジェネリック?なんでもいいです

処方してください。

0

雨の降るまえに

誰にも追いつけない
「時」の積み重ねにすべてを委ねて

だけど思い通りに動かない時間軸は
壊れた時計のように止まってしまった
歯車のなかで引っかかった二つの影
きみの時計も
わたしの時計も
違う世界の時を刻もうとしてる
ああ、それが運命だったのか
そういう運命だったのか
積み重ねた時間は誰のもの
手のひらに戻された「時」をみつめ
托された明日を憂う
庭の深緑は雨を待って
落ち合えるとおもった東屋は
沈黙を守る準備にとりかかる
だれよりも君を想っていたのに
この庭に君の後姿をみることは──

誰にも追いつけない
「時」の積み重ねにすべてを委ねて

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