こころのいちばんやはらかいところ

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新しい暮らし


この、聞きなれない静けさを
どうやって黙らせようか
新しい暮らしに慣れようとする猫が
啼きながらダンボールの隙間を縫い
とっくに眠ったであろう生活音の上を歩き
私に視線を投げては安心しようとする

とても真面目な眼をして
これは一大事
私にとっても猫らにとっても

冷蔵庫が腹を空かせてないている
液晶の箱が起きている誰かを捜してる
夜を走る車の音がこんなに近く
いつの間にかそれも慣れていく



朝は天窓からやってきて
私は目覚ましがなくてもそれを知り
部屋の隅に吹き溜まる夜を
綿埃のような静けさを
そっと そっと
逃がさないで暮らしていく

とても好奇心旺盛で
これは一大事
猫らにとっても私にとっても








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ちょっとのはなし


果てない旅路に
私は何をみるのだろう
風は大陸の黄砂を抱いて
真空を目指しまっしぐら
電線はその身をよじり空を揺さぶる
高速の時代というのに時差が生まれ
思いのほか手作りの窮み
おいてきぼりは慣れてはいるけれど
ちょっと哀しい

飽くなき世界で
私は何を遺せるのだろう
名無しのうた、それ以下とも
空虚を埋めるべくの文字
人生は曼荼羅のように摩訶不思議
運命と呟きたくなるから溜息を吐く
思いのように進まぬ日々
ひとりぼっちは慣れてはいるけれど
ちょっと切ない

過去のないみち
私は何を持っていくのだろう
振り向けば今日を歩く靴底に
追っ手のような昨日の泥
天地を覆う漆黒の闇が透過していく
沈黙と沈黙の電波は周波数が一緒で
想いはすれ違いを語りあい
今更じゃないと慣れてはいるけれど
ちょっと寂しい




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マグノリア


あたしは庭園のモノではないけれど
普段は路肩で車の愚痴を眺めて
雨上がりの小学生の傘に打たれて
子どものすること、許したるか
ねぇ、ちょっと顔を上げてよ
あたしは白木蓮っていうの
いつも空を見上げている

ほら、私を仰いでその先を気づいて
流れる雲を追いかけて
ボクはどこから来て
どこにいくんだろう、って
空と話せる少年におなりよ

あたしは忘れられた庭の片隅にいて
花の時期にしか思い出されない
直にくる桜に物語を奪われるけれど
自分で言うか?謙虚さとか
ねぇ、ちょっと立ち止まって
あたしは白木蓮っていうの
いつも風と話をしている

ほら、私を眺めてその声に気づいて
誰かの唄に耳を澄まし
キミはどこに居て
どんな人なんだろう、って
風と話せる少女におなりよ

あたしたちは何処にでもいる
ほら、ここ


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Little wing

うまく とべない
すぐ 地面に落ちてしまう
羽ばたく練習を課せられる日々

猫が身じろぎもせず
じっと待っている


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膝を抱えて


抱えた膝に
顔を埋めてしまう夜だってあるんだ
身体を木馬のように揺すりだしたら
考えているフリだけのことも
それでも朝は来る
だからあたしは
繋がった自分を見捨てないでいこうと

心配で眠れない夜も
祈るような仮眠のなかで
それでも信じている
誰かを何かを信じている
だから

だからあたしは膝を抱えて
信じている自分を抱きしめていこうと



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ラジオドラマ


いま降り注いでる塵や時間
沈黙と無色のいたずらは
静かなる意志のようなもの
そのうち埋もれてしまうに違いない

こころの何処かで分かってる
気づかぬ程度に透き通り
痛まぬように少しづつ忘れ
気晴らししながら慣れていくように

ため息はこれで良かったと
言い訳がまかり通るとき
記憶の缶 欠落のフィルム
かの映画のように繋ぎ合わせてみる

映像は無いけれど何よりも鮮やかで
音は無く耳にこだまする素顔のコエ

朗読の側から消えていく
それに似て




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純情

夢は滑稽なほうがいい
笑われてもこころ丈夫
汚さないため身を尽くす
こんな時代に生き残った純情

誰も信じなくてもいい
片ときも手放さなかった
いつかの少年少女たち
こんな時代だからこその純情

叶わぬ夢と嘆くなかれ
雨乞いしても空は笑い
自分の泪で根をまもる
保ち続ける心に住んで
深く、静かな脈を打つ

こんな時代だからこそ
こんな時代だからこそ


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そんな瞬間


君がきみであるとき
わたしに会いたいと小さく呼んで
責任のような小指ほどいて
呼吸をするような そんな瞬間

私がわたしであるとき
きみの少年に会いたいと思うから
罪悪のような左手ほどいて
鼓動が已まない そんな瞬間



きみとわたしの落ち合う場所で
風のなかに身をあずけるような

道の真ん中にわたしがいること
疑いもなく気負いもせず知ってる

そんな瞬間



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