こころのいちばんやはらかいところ

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シーツ


なかなか寝つけなくて
ため息を洩らしては寝返りを打ち
よれよれになったシーツを邪に撫で
遠く騒がしい夜は
背中を向けて繋ぐ

残念な朝はやってきて
黄ばんだ鉛色の天幕は堪えることなく
じめじめするのは怠惰が棲みつく心で
皆勤賞のカラスは
始終、気兼ねなく

手元に置いた本も直ぐ閉じて
気のない時間がやけに長くて
一年前の自分をもってきては
重なることをひどく拒んだ

カレンダァを斜線にした雨は止み

夕べの文庫の耳折したところは
心当たりが再び開かないけれど
朝、一番でしたことといえば
布団を丸裸にして笑ってやった


糊を利かせた白いシーツが
バサッ バサッ と青い空に翻るのを
ただ 聞いていたかった

乱暴な風にしばしあずけて
バサッ バサッ と青い空に翻るのを 
ただ 眺めていたかった



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血流、悪いよ


眠るまえにタイプライターで
他人の夜までも起き上がらせ
味気の無い文字をひけらかす
数字のように並べあげては
自分に酔いしれる若き人よ
たくさんの本を読みあさり
私より物知りではあるが
生きている範疇を超えて
そのあごは前につき出て得意満面
ちんぷんかんぷん同士は褒めるさ
いやしくも裸の王族だから

車の車種を全部言える
駅名を順に全部言える
そういう純粋な興味ではなく
空っぽのインパクト好きが
抜きん出たいと思う心が
まだ生きていない部分を
拾ってきた記憶で埋めて
食べてもいない味覚を語る
(ジャンクフード、体に悪いよ)

眠れぬ夜は これから

おむつが濡れて気持ち悪い
腹が空いた、と泣けばいい
声を震わせ宇宙を巻き込み
母をおろおろさせればいい
赤ん坊の泣き声は
詩人にも勝る

ばぶー。


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小さな手


私は少しだけ微笑んで泪した
私を知る小さな手が語りだす

小さな手は
何を握り締めている?
私は穏やかに微笑んでいた
ささやかを感じるこころで
晴れた日に
五指に絡まる想いを翳して
手の甲は嘘をつけず
手のひらに夢をみる

小さな手は
何を解き放ったのか?
私は少しだけ涙ぐんでいた
温もりがそうさせるのだと
雨の降る日
指先で切ない文字を書いた
手の甲は悲しみを知り
手のひらをそっと閉じ

私は少しだけ微笑んで泪する
私を知る小さな手が語りだす

手の甲は嘘をつかず
手のひらに夢をみる



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夢は夢


物分りがいいことを求められて
後ろの少女は口をつぐんだ
見えない距離は耳を澄まして
かすかに響く鼓動をたよりに

暗闇に誘導のための点滅ランプ
心拍のような規則正しさ
それすらも次を打つまで長く
考え事で空を見てると見過ごして

不信感か?と訊ねられても
結び目を渡されたわけでもなく
するりと抜けてしまいそうな糸を
イメージを頼りに必死に握り締めて

そんな私をあざ笑うかのように
風は試すように私を前のめりに
移り往く春 翻るコートの裾
ボウ、ボウと感傷をふり払う

自分を残念に思う心が
呼び出してはにじり寄り
分別は紙に書いただけの文字となる

眠ることを知らず
目を開けてみるユメと潜りこむ夢

古典というには志が低く
前衛というには縛られて
アングラまでは汚れず

夢は夢



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がらんどうの家に


がらんどうの家に置いてきたもの
過ぎ去ってみれば証のようなもの
こころの内側に小さな日向
そんな風景もあったかもしれないと
しまえる箱がありますように

壁の画鋲に留められた
寄りかかるため息の色
在りし日の気配は
積った塵が光の帯に遊び戯れ

忘れられた子ども部屋
存在を隠す北向きの窓
孤独を片付けない和室
生きる仕草をする洗面所
それでも繋いだキッチン

遮るカーテンのないリビング
沈黙をくすぐる過の日差しは
ことのほか眩い



がらんどうの家に見たものは
ごっそり抜けた其処にあった暮らし
無邪気に笑っていた日々を
平気で「嘘でした」と言ってしまう
いのちでありませんように


2

たんぽぽ


アスファルトを割って咲く
黄色いたんぽぽ
空はとても高くって
便りなんて聴こえやしない
だけど誰かの弾む足音に
きっと空が笑っていると
分かったような振りをして小さく頷く

そのうち散り散りになって
何処へとも無く綿帽子
ドラマなんかもっていない
上空のヘリコプターの濁音に
かき消されてしまうため息
さっきのことはもう忘れる
でも、見つけたらちょっとだけ嬉しい

ありふれた日常に付箋をつけた
黄色いたんぽぽ

忘れても罪に問われない
黄色いたんぽぽ



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