こころのいちばんやはらかいところ

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獰猛な雨


嗚呼、朝焼けのシンフォニー
ファンタスティックな空色ノート
うねる雲が互いに呼び合って
反射した光が真珠のように輝やいていた

ゆうべ土から這い上がった蝉が
乾いたばかりの羽を震わせて
この夏 最初の蝉しぐれ
痛々しくもあり、健気である生

プーンと大気が張り詰めた
まだ夢の中 それとも──

 
 獰猛な雨が朝を食い尽くしていく
 まるで夢とはこのことだと言わんばかりに
 胸を打った色は土砂のように激流に流されてしまった
 だからさっきのは嘘だと思っても罪じゃない

 せめてもの朝の涼風を奪った蝉は
 大口を開けた何者かに噛み砕かれてしまい
 ずるい烏は杜に逃げ込んだ


全てを台無しにされてしまったのに
残念に思うより先に
やがて鼓膜から消えていく音無き雨
強い直線に変わっていく映像だけの雨

なんか、 ・・・やばいです。

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生きる姿勢


正直すぎる日射しがむき出しの肩を射す
言われてみれば『らしさ』の背筋は
精一杯 虚勢を張っていたものの
世間体とモラルの袖で覆い隠し
光るような汗を見ないままでいた

姿勢の良さが生きる影を創るのならば
馬鹿正直だと笑われても恥じることなく
うな垂れる首をキッと上げて
前を見据えたではないか

世の中の大半が適当な相槌で誤魔化すのを
無念の涙を飲み込んでは渇きを覚え
倒れ伏すときでさえ前のめりで
手は明日に架けたではないか

木蔭ばかりを選ばずに真っ直ぐ歩いていくならば
見上げれば抜けるような紺碧を奔る一筋の風
地よりはアスファルトに浮かぶ陽炎を見た風
そして今、
こころの内側に掻いた珠のような汗を
労うようにたたく風

あたしの肩は、首は、翳ることなく
正直すぎる日射しに晒し

あたしの肩は虚勢、または自信に満ちて
鎖骨から真っ直ぐに伸びていた


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金の月

夜空に浮かぶ金の月
風の抜け道 ごろんと寝そべり
からっぽにして 何、想ふ
屋根のない空 何を夢見る

ここちよい疲労のなかに脚を投げだし
身体とこころが同じ数だけ脈打って
穏やかに満ちていく今だといい

夜空に浮かぶ金の月
今日という日に
今日という日に

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いいわけ大将


まさかの地味な窪みで足を挫くことがある
意外性と油断にご立腹
ケチは跳ね返るから苦笑いでごまかす
マジで窪みを詰れる人はちょっとだけ羨ましい
かといって出来ない自分は嫌いじゃない 
むしろ好き

曲がりくねった道を真っ直ぐ歩きたい
真っ直ぐな道を蛇行したい
垣間見えた直感のようなものが手招きする
横にはなく縦にあるものに時計の針を合わせて 
感じるときは裸足でいたいと思っている
だから好き

人がそれを不器用と名付けたときから
言い訳には持ってこいだと
だけど決して楽じゃなく
道はいつも凸凹で
雨があがったらあがったで
虹に見とれてぬかるみの餌食
ちぇっ!

今だけの虹、泥はそのうち乾くだろうから


それでいい、
それがいい、

だから好き、むしろ好き。

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WWW.


あたしはあたしを検索してみた
けれどそんな人はどこにも居ず

鏡の前に立って自分を抱いてみても
手に伝わる体温は見えはしない
似たような仕草でそうして少しだけ
生まれたタイムラグをさがして
裏切るための瞬間を見落とさないよう

あたしはあたしを訊き歩いたけど
どうやらそんな人は端から居ない
落胆と、安堵と、疲労でいっぱい

2

グットバイ


グットバイグットバイグットバイバイ

父の帰宅を待ちわびていたころ
お土産がほんとうにあったころ
おぼえたうたをしっつこく
うんざりするほど披露して
「上手、上手」をねだったころ

笑い声のまんなかにあたしがいて
団欒のまんなかにちゃぶ台を置き
明日に悲しいことは書かず
夢は眠るごとに叶うものだと
興奮を寝鎮めて夢を深追いする夜

グットバイグットバイグットバイバイ

3

窓辺の椅子に深く腰掛けて


     
 あまいろ
雨があがった天色の空に
置いてきぼりをくらった雲
目映い陽ざしに目を細めて
洗いざらしの風が口笛吹いた
雲の端っこが千切れて
屋根裏の窓を目指してくる
過去に放った鳩がくる
喜びも悲しみも足に結わいて

雨が降る日に少し戸惑い
くもったガラスに文字を書く
読まれる前に流れてしまい
それは泪のようにも見えた
凍えそうな星の夜には
羽根に宿った陽だまりを抱き
寄りかかれば軋む壁で
振り子の音を子守唄にして


過去に放った鳩がくる
喜びも悲しみも足に結わいて
窓辺の椅子に深く腰掛けて
疲れた羽を休ませる膝になろう

窓辺の椅子に深く腰掛けて
疲れた羽を休ませる膝になろう


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通り雨


直ぐに止むだろうと思った
「ツイてないな」の今日だとしても
美容院の帰りだったから
いつもなら横目で通り過ぎる喫茶店だけれど
立ち止まってもいいかなと

扉を開けるとドアベルが
「いらっしゃい」と迎えてくれて
ハンケチで滴を押さえながら
吸い込まれるように仄暗い誰かの指定席
迷わず奥の椅子に座る

通り雨なら直ぐに止むけれど

はめ殺し窓の向こう側に
逃げるような早あるきの私をみた
傘を受け取らなかったのは
君に会う口実を抱きしめて生きてしまうから
本当はあの日も此処にいた



「通り雨ってやつですね」
店主の温かい無関心が陶磁のカップで香る
指でねじった髪がするっとほどけて
はにかんだような視線で答える

「通り雨ってやつですね」と

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バラード


軽きゃ浮く道理に
地に足のつかない言葉ばかり
簡単に癒されてしまう心ならば
たいした悩みでもなく
気を抜く生き方に便乗しては
草を食み犬に追われて囲いで眠る
羊の群れから聞こえてくるのは
同じ鳴き声ばかりで

打っても響いてこない
どうしてなんだろう

学習する必要もなく
同じことの繰り返しが心地よく
そこにしあわせがあるのだからと
出る杭を打ち続ける
大人になったと告げられない少女
箱庭のペットとして飼われている
気づいていないのは本人ばかりなり
紙粘土の軽さにも似た

いきている音がしない
どうしてなんだろう

基盤のように整った
都会的センスが自慢げに歩く街
どの言葉もショーケースの飾り物
同じロゴの袋を提げ
需要と供給は天秤の針を揺らさず
このときのツケはあとで質屋に流れ
外側は涼しい顔をしてまたお買い物
My Modeを持たない人々

打っても響いてこない
どうしてなんだろう

ここは居心地がいいか
裏通りの事情を知る立ちんぼが
卑屈ゆえの眼差しで追い払おうとする
そりゃ八つ当たりだって
生きかたを咎めているんじゃないさ
そこに居続けようとする曲がった影は
路上の子守唄に寄りかかったまま
だから夜が終わらない

いきている音がしない
打っても響いてこない
だから夜が終わらない

どうしてなんだろう

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七月の窓にようこそ


七月
まだうすねずみ色の空が似合って
まとわりつくのは汗と湿気た風と
ため息をつかないジンクス赤い傘

この道
まっすぐ行かれればの話だけど海
目印の塔はゆるぎないけれど迷路
進んで迷子になる人には直線距離

あの雲
ぐんぐんと見ていて頼もしい限り
その底に心待ちの青空が見え隠れ
急ぐのは会いたい人がいるってさ

ゆうべ
屋根裏の積った塵がそっと耳打ち
差し込むひかりの中だけキラキラ
晴れたらそっと逃がしてやってと

七月
湿った木枠の窓を開け放ちご挨拶
破ったカレンダーを紙吹雪にして
風のパレードにイロドリを添えて



昨日しまい忘れたスニーカーが
鉢植えと並んで文句を言っても
今日こそはきっと乾くさ、と
今日こそは

七月の窓にようこそ


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