こころのいちばんやはらかいところ

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明日。


困惑を面倒くさいと思ったら
早く眠ることにするよ
逃げるようにロフトに上がり
絶望に似た寝息をたてる

「また明日」と手をあげて
二人 ちょっと 揺らぐ
視線の合わない笑顔を交わし
もの言いたげな口を封じた

それでも生きてきたんだよ
虚勢のようなプライドを
君のやり方でやんわり踏み
ミシッと歯切れの悪い音
私のこころで鈍く響いた

「また明日」と手をあげて
二人 ちょっと 揺らぐ
陰気な感情が漏れる戸を閉め
振り向かないで足を速めた

それでも生きていくんだよ
理由が無くても意味は欲しい
私だけのルールに沈黙する
ゴクッと鼓膜を響かせて
君のこころで遠く響いた

いいかげん窮屈に嫌気がさしたら
空っぽにしてがっかりするよ
追いかけてきたメールを閉じて
希望に似た眠りを強いる

生きてることに疲れたら
「また明日」と手を振るよ
「また明日」と迎えにいくよ

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キヲク


わたしに似てると言えば
質の悪い画用紙だった
いまよりずっとザラついていた
色の埋まらなかった凹は
離して見ると光を醸しだしていた
言葉を持たない夢があった
笑みがこぼれるような一瞬がそこにあった

正直なクレヨンは
誰もが同じものを所有して
減り方にはいろんな解釈があった
並び方はまちまちだけれど
棒グラフのような規則性があった
間違わないような癖があった
使われない色は暗黙の了解で決められていた

ひっかき絵のために
息を殺す色があった




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失われた言語

かつて
言語があった

それは
放熱するときのエナジーに似た
または
深海のひと粒が転がる時のよう
まるで
魂の繊毛が揺らぐような言語だ

それは
音はなく色もなく形を成さず
それらは
潮の満ち引きのような意志と
月に寄り添う影のような品格

尚も君臨した いのちの存在
他の種が所有しない周波数で
沈殿のさまのように
語りかけるのだった

ありつつあるもの
失われつつあるもの
誰も聞いたことのない
誰も話したことのない
終ぞ
解読されることを
拒んだ

その先を
聞いてはならぬ

そういう正しさが存在した

その先は
言ってはならぬ

そういう正しさも存在した

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父の背後で


父は俯くひとでは無かったが
前傾がかった後ろ姿に
小さくなった、と。

決して遠くはなくなった眼差しを
まるで
うたた寝の肩に
カーディガンを掛けるように投げた
せっかちで追いつけなかった足取りも
今では迷子になるようで
寂しさと切なさで呼び止めた

皺だらけの瞼に殆どを覆われた奥で
まだ キラリと光るものがある
まだ 懼れるものがある
一寸たりとも乗り越えたりしない
あなたの子供でいられることに安堵する

父は 
小さくなってしまってはいるが

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