こころのいちばんやはらかいところ

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がらんどうの家に


がらんどうの家に置いてきたもの
過ぎ去ってみれば証のようなもの
こころの内側に小さな日向
そんな風景もあったかもしれないと
しまえる箱がありますように

壁の画鋲に留められた
寄りかかるため息の色
在りし日の気配は
積った塵が光の帯に遊び戯れ

忘れられた子ども部屋
存在を隠す北向きの窓
孤独を片付けない和室
生きる仕草をする洗面所
それでも繋いだキッチン

遮るカーテンのないリビング
沈黙をくすぐる過の日差しは
ことのほか眩い



がらんどうの家に見たものは
ごっそり抜けた其処にあった暮らし
無邪気に笑っていた日々を
平気で「嘘でした」と言ってしまう
いのちでありませんように


2010.04.17 *Sat Writing

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抱き合う


ふたりは裸で抱き合う
質問攻めにした口は
答える口を強引に封じる
欲望は忙しい
その間
それぞれ在らぬところにいる
だけど
とても冷静で居続けるところ
頭の芯がぞっとしている
ひとりでいたら寒いところ
はやく戻ってきたいから
たがいの瞳のなかを捜す

ああ、居た

おかえり
ただいま

ふたりは裸で抱き合う
こんどはじっとしている
生まれたときから知ってる温もり
欲望は用なし
もう
ひとりぼっちになりたくないから
そして
肌を撫でる音を聴いている
ひとりでいても温かいところ
それから静かにしている
たがいの心音に耳を傾け

どうか眠ってしまうまえ
腕のなかをぎゅうっと強く
そして解いて

ああ、居る

ただいま
おかえり

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モザイク


ここに空が欲しい
すると
こころの欠片たちが一斉に名乗りをあげる
空は多くの人々に期待され、在りつづける
なので
ときどき見向きもされなくなる

わたしは欠片を磨き
または時代の垢に覆われたまま
光と影を置いていく

夢見るチュニジアンブルー
憧れの近くにも及ばない 
で、
未完成がのた打ち回る
それゆえ
わたしはわたしの承諾を得
生きている


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