こころのいちばんやはらかいところ

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錆び色の鐘

町外れにある鐘楼の鳴らずの鐘
水汲みの女は日課のように見上げ
寂しそうな面持でため息をつくのでした
錆び色は夕日に溶けて
それがとても切なくて

最後に鐘の音が鳴り響いたのは
何時のことだったのかも忘れそうで
今日も何も起こらなかったと嘆くのでした
風の強い夜に少しだけ
期待する自分を恥じて

塔の螺旋階段は朽ちて足場を失い
昇る足を躊躇わせますが仰ぐ天辺の
少しだけ覗く青い空は希望のようでした
黒いシルエットの鐘は
だれを待っているのか

鐘の音と共に澄み渡る日々を思い
解れた髪を結わい直し井戸に向かい
昨日の夢を忘れないようにと呟くのでした
裸足の足は土に塗れて
こころ丈夫になりたいと



町外れにある鐘楼の鳴らずの鐘
水汲みの女は日課のように見上げ
塔の屋根に「時」の鳩がとまる日に
手に持つ桶を投げ捨てて ──

錆びた鐘を
この手で打ち鳴らそうと思い
深い呼吸を一つ 吐くのです

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