こころのいちばんやはらかいところ

3

黄昏


秋空
ふと
懐かしさにこころ襲われ

あたしは
追いかけていた
なにを
追いかけていたんだっけ
あたしは
探していた
なにを
探していたんだっけ

忘れた

あたしは
逃げていた
なにから
逃げていたんだっけ
あたしは
奪っていた
なにから
奪っていたんだっけ

忘れた

冬空
ふと
忙しさにこころ盗まれ

2

オヤスミナサイの祈り


どこか旅にでたいな
なにかするため
なにもしないため
誰かにあうため
誰にもあわないため
ひとりになるため
ひとりにならないため
おしゃべりになるため
なにもしゃべらないため
自由になるため
不自由になるため
花をさがすため
枯れ枝を集めるため
夢をみるため
深い深い眠りのため

(ToDoの半分もできなかった)

このうえない疲れに
今日の残りをくれてやるため

(それで許してほしい)

0

おんなごころ


わたしとあなたのすきまには
時の砂が詰まってる
わたしを抱きしめることはない
あなたのまえでは少女も
いつまでたってもおねえさん

干からびた手にぞっとして
あなたの正面から少し外れる
わたしが初恋らしきをしてた頃
あなたは洟垂れの泣き虫で
わたしはなにかに意地を張り
意味もなく空を見あげる


あなたとわたしのあいだにある
許されない場所

もう
おんなにはなれないな

それはそれで悲しいな

2

見つめるひと


わたしは言葉を信じてはいない
無意識の動作に潜むただならぬ呼吸
そのひとの後ろにそっと立ち
ただ見つめている
わたしは見つめるひとになる
なにもしない
あなたがそうであるように
わたしは見つめるひとになる

わたしは
あなたの後ろにそっと立ち
あなたの無意識を見つめるひとである

0


冬に懐かしい青空はずっと高い
それから何かに遠い
届かないと知りながら
なにか言葉を持ってきた
(そうじゃない)

やさしさは悲しみの深さと似てる
わたしは何も量れない
いちど満ちてしまうと
あとはただ滴る不愉快さ
(そうだったんだ)

手の届かないところにあるもの
それは言葉に過ぎぬ
それぞれの所有する
なにか言い忘れたこと
(それも"声"だ)

わたしのこころはあたたかい
だが言葉は尖ったものになる
素直は感情の支配下にあり
正直は己との戦いです

0


わたしが言葉と向き合うとき
そこには誰も居ない
誰かがそれを読み始めたとき
そこにわたしは居ない

わたしは愛について問う
そして誰かが答える
わたしは何も訊いてはいない
あなたは自問自答したのだ

わたしが核と対峙するとき
沈黙の群衆が取り囲む
それらの膚の荒々しい部分で
古い細胞を削ぎ落とす

わたしが愛をうたう
すると誰かの鼓膜が震える
わたしは何も歌ってはいない
あなたが唄った声なのだ

わたしの森

誰かがわたしを鳥瞰する
わたしは水脈を証す
わたしは自らを生み続けるが
報せを馳せることはない

誰かが愛について問う
わたしはそれに答える

耳を澄ますとき
瞼をそうっと閉じる時の静けさだと

1

各駅停車に乗って


またね、
こんどはいつ会えるかな
あなたのくれたくちなし
二年ごしのおねだり
わたしは各駅停車に乗って

よろしくね。
人見知りの葉を撫でながら
ウォークマンをONにした
ごきげんに揺られて
わたしは各駅停車に乗って


ときどきこうして
約束を少しだけ分けてもらう

わたしは各駅停車に乗って

0

朝の力


朝陽は燦々と降りそそぐ
毛布を剥がないまま
夜の冷たさも抱いていた

朝の力は
誰にでも等しく

光のなか隠しだてのない手の皺を眺め
残れる日々の朝を数える
指を折れなくなる日まで

この季節 いちばん低い太陽は
わたしを部屋の奥まで追いやる
同じ仕草の私は微笑っている?
わたしは 笑っているよ

分け隔て無さを身に受けて
わたしも自分に成る

朝陽は燦々と降りそそぐ
毛布を肩から下ろし
今日のため昨夜を逃がす

朝の力は
誰にでも等しく





0

アイトマートフの木


まだ見ぬ景色に根を走らせよう
わたしを遠くまで連れていってほしい
わたしはわたしを破り伸びていく

無傷の空に近しいものになりたい
制空権を持つものたちの目印になりたい
孤独な風の聞き上手になりたい

遠くへ旅立つ老人には思い出話をしよう
約束のわたしを解放してくれないか?
あなたさえ忘れた秘密の存在

少年の宝箱には裸根のすき間を与えよう
この枝では大人になると見えなくなるもの
しがみついて登っておいで

泣いたあなたをどうすることも出来ず
悲しみを知った梢を震わせてみたものの
わたしは銀河のでくのぼう
 

冬には眠る芽を守り 春には天地を賑わせて
夏には大気と交感し 秋には凡てお返しする

ぶっ足ったまま生きるを証す
わたしはただの名もない木

2

music


音が鼓膜の向こうに行きたがる
私はそれを内側で聴き入り
こころのなかの泉に落とす
水面に現れる紋は世界になり
誰にでもなり何処までも往く
乱暴に、または丁寧に
四方八方に飛び散った飛沫
それらは言葉になりたがる
ときにはサボって水浴びだけをし
私は裸のまま世界を歩こうとする

誰にもなれず何処にも行かれない

がっかりした私は
微振動し続ける水の上に在る
七色に輝く粒子などを拾い集めて
やがて消え往くものを記す


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